華やかなイメージのある美容業界。人をキレイにすることができる仕事って素敵ですよね。しかし、そんな美容業界で成功するためには、美容の専門技術に加えて、接客のスキルなど、学ばなければいけないことがたくさん。
そのなかでエステティシャンという仕事は、免許がなくても働くことができます。しかしプロとして成功していくのはとても難しい世界。多くの人が独立にあこがれて開業しますが、失敗も多いのが現状です。今回は、エステ業界の現状や独立や開業の難しさをご説明。これからエステティシャンを目指す人はぜひ確認しておいてくださいね。
INDEX
エステサロンを開業するために必要な費用
エステサロンを開業するために揃えておく備品
エステサロンを開業したら開業届を出そう
開業する場所によって異なる収入
エステサロンの経営者となる心構え
エステティシャンが持っていると有利な資格
意外と厳しいエステサロンの経営
エステサロンを続けて行くためにも見直しが必要
エステサロンを開業するために必要な費用
独立費用について
独立開業に必要な費用は、物件を借りるか、自宅を改装して行うかで大きく異なります。物件を借りる場合は、賃貸料がかかり、この費用が支出の多くを占める場合がほとんど。場所にもよりますが、敷金礼金、毎月の家賃、仲介手数料だけで20万円以上はすると考えておいてよさそうです。
また、施術用ベッド、シーツやタオルなどの消耗品、広告宣伝費などを合わせると100万円に届くことも。部屋を改装するためには、さらに資金が必要になり、諸経費なども含めると物件を借りて開業するためには、150万円程度は最低でも必要と考えておきましょう。
一方、自宅の一室を改装して開業する場合は、かなり費用が抑えられます。隠れ家サロンとして毎日少人数のお客様を対象に施術を行うのであれば、物件に関する費用がかからずにすみます。
また、以前勤めていたサロンのお客様をお呼びして小規模で始める場合は、広告宣伝費も少なく抑えることができますので、ここでも経費を浮かせることができます。とはいえ、部屋の内装をサロン用に改装するのに20万円ほどはかかります。専用の施術用ベッド、シーツやタオルなどの消耗品やオイルなども揃えると、最低でも60万円~80万円は必要になると考えておきましょう。
しかし全員が自宅で開業するわけにもいかないでしょう。そんな時に経費を抑える方法が他にもあります。まずは居ぬき物件で開業するという方法です。居ぬき物件とは、以前他のサロンが使用していた物件で、内装や設備が残っている物件のことを指します。
以前にエステサロンや整体・針灸の診療所として使われたテナントがあれば、インテリアを工夫するだけですぐに使い始めることができる可能性が大です。トイレや水道の位置などサロン用に改装されていることがほとんどですので、ご自身のサロンでもそのまま使用することができ大幅に改装費用が抑えられるでしょう。
さらに、間借りするという方法もあります。これはホテル、ジムなどのスポーツ施設、温泉施設などの一角を借りてエステサロンを開業する方法です。テナントを借りたり、自宅を改装したりする費用を抑えることができます。また、ある一定のお客様が行き来するため、集客のための広告宣伝費も場合によっては必要ありません。ただし、お客様の層が施設の利用者に限定されてしまうことや、内装に制限があり自分の思うようにデザインできない、設定するコースにも制限があり学んだ技術が活かせない、というデメリットが発生する場合もありますので注意しましょう。
独立支援について
エステサロンの開業を支援する制度を利用するのも賢い方法です。一部の大手サロンが実践している「独立支援制度」を利用すると、独立のハードルをぐんと下げることができます。独立支援制度は、自分のサロンをオープンする際にある一定の条件を満たせば資金面、広告宣伝面、経営面でサポートが得られる仕組みです。条件は独立支援制度を取り扱うサロンによって異なりますが、一定以上の勤務経験、フランチャイズシステムへの同意などです。
フランチャイズシステムとは、サロンが有するブランド、サービスを利用する権限を独立開業するオーナーへ譲渡・委託すること。ブランド名やサービス名を使う事ができるので、以前来て頂いていたお客様も引き続き安心して来店できるし、新規のお客様の集客も安定して獲得していきやすいといったメリットがあります。一方で、ブランド名・サービス使用の権利を得る代わりに、サロン側に一定のロイヤリティーを支払わなければいけないため、手取り給料は少なくなってしまうというデメリットもあります。
ただ、独立支援制度のほとんどは、必要な資金を無担保で融資してくれたり、美容機器や施術ベッドなどリースできたりするなど、独立開業資金面でのサポートを得ることができます。他にも、使用するオイルや化粧品に関するトラブルが発生した場合の賠償責任なども整っていることもあり、初めて開業する方にはメリットがたくさんあります。
中には、スタッフ育成、財務管理など経営者として必要な研修を準備してくれている場合も。すでにフランチャイズで独立成功しているオーナーのところへ話を聞くことができ、開業前に経営に関する悩みが解消されるのは嬉しいですよね。
また、開店後もフランチャイズ開業店舗の運営に関するアドバイスや、他のフランチャイズオーナーとの情報交換の場が提供されていることもありますので、心強いですよね。
エステサロンを開業するために揃えておく備品
独立開業するときに必要な用具をご紹介します。不足がないようきちんと準備をしておき、開店後に慌てて取り寄せることのないようにしましょう。
施術用大型備品
ベッド、エステ用の機器、ホットタオルキャビネット、スチーマー
施術用消耗品
タオル類(バスタオル、フェイシャルタオル)、シーツ類(大判シーツ、ペーパーシーツ、フェイス用ミニシーツ)、下着類(ペーパーショーツやブラジャー、ガウン)、アメニティ(スリッパ、化粧用具、コーム、ケープやクロス)
カウンセリング用品
カウンセリングシート、契約書類、筆記用具、領収書、グラス、茶葉、ポット
掃除用備品
消臭剤、モップ、ぞうきん、ほうき
エステティシャン用具
エプロンや白衣、マスク、手袋
経営管理用備品
パソコン、インターネット回線
店内環境用
BGM用ステレオ、CD、花や観葉植物
そのほか、フェイスエステのコースを設ける場合、ボディのコースを設ける場合で必要な用具が異なります。例えばフェイスエステの場合は、以下のような用具が必要になります。
刷毛
洗顔料泡立て、塗布用
ガラスボウル
洗顔料泡立て、アロマオイル調合用
スポイト
業務用精製水、ローション、ミルクなどの入れ替え用
ラバーボウル、スパチュラ
パック薬剤のかき混ぜ、塗布用
スポンジ
洗顔後の水分ふき取り、マッサージ
パック
コットン、ハイガーゼ(石膏パックなどで使用)
エステサロンを開業したら開業届を出そう
テナントを借りての開業でも、自宅でのサロン開業であっても、事業を始める時には開業から1ヶ月以内に「個人事業主の開業届出書」を税務署に提出する必要があります。この届けは提出しなくても罰則を受けることはありませんが、事業主が受けられる税金の控除を受けられなくなってしまうので、必ず届け出るようにしておきましょう。
開業する場所によって異なる収入
マンションの一室を借りてサロンを開業した場合
お店から給与をもらう通常のエステティシャンとは違って、独立・開業した場合、収入はすべて自分が稼いた売り上げによって決まってきます。といってもお店の売り上げがすべて収入になるわけではなく、売り上げから諸費用を引いた額になってきます。エステサロンを運営していく上で主な諸費用は人件費、家賃、タオルなどの消耗品代、広告費などが挙げられます。
例えば1人あたり60分8,000円の施術を一日に6件こなすと、売り上げは48,000円。これと同じ売り上げで月に20日働いたとしたら、1カ月の売り上げは96万円となります。これはかなり順調な売り上げですが、マンションの一室で開業して家賃が月10万(光熱費等込み)だとすると売り上げから引いて86万円。
そして消耗品の費用やチラシなどの広告費も、それぞれ月10万円程かかることもあるそうなので、さらに20万円がマイナスされて66万円ということに。
さらに人を雇った場合は人件費がかかりますし、設備などの初期費用に使ったローンの返済が必要な場合もあるので、この場合の現実的な月収は大体50万円前後となるでしょう。
しかし約100万円の売り上げというのはかなり順調なサロンと言えるようで、中には月の売り上げが64万円で月収が32万円という人や、月によっては収入が10万円近くまで落ち込むという人もいるようで、収入の波もあるようす。そこで安定した収入を得るために、リピーターを獲得したりと様々な工夫が必要になってきますね。
自宅でサロンを開業した場合
近年では自宅の一室を改良してエステサロンを開業する「自宅開業」という形態での独立方法も注目されています。自宅開業では費用となる家賃が別途かからないので、少ない売り上げでもより安定した収入を得る事ができるようです。しかし、施術台などの設備には初期の段階である程度お金をかけなければならない他、しっかりと集客してリピーターになってもらうには外装などのリフォームや家具の新調なども考えなければなりません。
お店が軌道に乗らないうちは「月に2~3万円も儲からなかった」という人もいるようなので、初期費用をちゃんと回収しようと思ったら、知り合いをそれとなくお店に誘ってみたりご近所に宣伝したりと、人脈を活かした積極的な宣伝活動が重要になってくるでしょう。
また、自宅で開業したエステティシャンの収入は、そのオーナーの経営スキル、技術スキルによって様々です。うまく軌道に乗り人気の隠れ家サロンとして経営できれば、月収100万円なんてことも夢ではないようですが、開店当初は10万円に届くか届かないかくらいという方が多いようです。
独立しても最初は来客が少ないことはみな同じですので、例えば1回7,000円のコースを一日1人施術、20日程度営業したとすれば売り上げは約15万円程度。宣伝費に5万円を投資していたとしたら実質は10万円です。また、初期投資として施術用ベッドや消耗品を揃えた分の経費を回収するまでには実質マイナスということも。最初は赤字を覚悟しておきましょう。黒字にならない期間に暮らせる貯金はあるか、ご主人や実家など頼れる人はいるかなど一度冷静に考えておく必要があります。
面貸しでサロンを開業した場合
個人事業主として「面貸し」を利用して働く方法についても紹介します。こちらは既に営業しているサロンの一角を借りて働くことが出来るシステムで、借りている間は自分が事業主で、売り上げはサロンと分配されます。
つまり還元率が4割の面貸しで100万円売り上げたとしたら、40万円が収入になるわけですね。「せっかく稼いだのにお店に取られたくない!」と不満に思う人もいるかもしれませんが、実際に営業しているお店を借りるわけですから、初期費用や広告費がほとんどかからないので、かなりリスクの少ない働き方と言えます。それに元々お客様が集まっているサロンに間借りするのであれば、集客の手間も減り安定した収入が見込めるはずです。
関連記事:エステティシャンの給与事情って?
エステサロンの経営者となる心構え
事業者として責任を持とう
「保健医療関係法規」「衛生関係法規」「薬事関係法規」「特定商取引」などの法規には、美容業界で開業するにあたって知っておくべき知識や決まりが書かれています。この中で「特定商取引」は業界に関わらず、消費者を保護するために事業者が知っておくべきルール。エステはサービスを提供するにあたってコース契約を結ぶのが一般的なので、事業者は契約に関する正しい知識を持っておくべき。最終的にお客様のためになることなので、正しい知識を吸収しておきましょう。
経営の知識を学べる学校を選ぼう
美容学校の中には、経営の知識を学べる学校もあります。集客や店舗運営など経営の知識を学べる学校もあるので、将来的に独立を考えているのであれば、資格や経営ノウハウを身につけられる学校を選びましょう。
エステティシャンが持っていると有利な資格
そもそも資格は必要なの?
結論から言ってしまうと、エステを開業するために必要な国家資格は現在のところありません。誰でも開業できるため市場が飽和しているともいえますが、逆に言えば、実力がなければ廃業に追い込まれてしまうのも事実です。
エステティシャンとしての国家資格はありませんが、民間認定資格はあります。資格を持っているとお客様の安心感も高まりますし、自身の実力を証明するものにもなります。新規のお客様を獲得するためにも何らかの肩書きを持っておく方が有利と言えそうです。
特に業界の最大手とも言われる「一般社団法人 日本エステティック協会」の「認定エステティシャン」という資格は、エステティックに関する様々な基礎技術を身につけることが出来るので、取得しておいて損はありませんよ。
協会では、認定校制度・講師制度・教育制度を管理し、資格取得者はエステティシャンの知識や技術を示すことができるので、独立開業を考えている方は取得しておくと良いでしょう。
エステティシャンとして独立してやっていくためには、技術は絶対に必要です。そして同じぐらい大切なのが、自分が持っている技術をお客様に信用してもらうことです。エステの資格は開業に必須ではありませんが、資格を持っているというだけでお客様は安心。独立するからこそ、実力を証明できる資格は取っておいた方がオススメです。
お客様の中には取得している資格について確認してくる人もいますので、信頼を得るためにも最低限、基本的な資格は取っておきましょう。
エステサロンを運営していく上で最も大切な「接客」の技術を学ぶことができる「一般社団法人 日本エステティック業協会(AEA)」の「AEA認定エステティシャン」という資格もおすすめです。さらに「海外にサロンを開いて起業したい」という人は、難易度は高いですが「AEA認定インターナショナルエステティシャン」という世界水準の技術を学べる資格に挑戦してみるのも良いでしょう。
意外と厳しいエステサロンの経営
相次ぐ閉店
エステサロンは現在、全国に1万5,000店あるとも言われており、さらに年間1,000店ものサロンが新規出店しますが、同じ年に同じ数だけ閉店してしまうそう。せっかく開業したサロンのうち、1年で半分が、3年でほとんどの店が閉店に追い込まれてしまうほど、エステティシャンとして独立して成功するのが難しいのです。
市場が飽和
最近では男性専門エステの増加や、また、整体や化粧業界など、異業種もエステを取り入れたサービスを展開しており、エステサロン同士での競合が激化。技術やサービス面でライバル店との差別化ができなければ、値下げに頼らざるを得なくなってしまい、経営を苦しめる要員となってしまうようです。
エステサロンを続けて行くためにも見直しが必要
エステを開業するのに必要な国家資格などはありません。極端に言えば、誰でも開業できてしまうということ。そのために、閉店も多くなってしまうようです。しかし、実質的な閉店の理由は他にあるようです。自分のどこが足りていないか、今一度、第三者の目になって考えて行きましょう。
技術不足ではないか
資格取得が必要ないため開業しやすい一方、廃業しやすいのもエステサロン。廃業の理由は様々ですが、大きな理由としては技術不足と経営ノウハウの不足といえます。
技術不足でいえば、オーナー自身の技術はもちろんのこと、一緒に働いているスタッフの技術的スキルが不足している場合があります。店舗が軌道に乗ったためスタッフを雇ったのはいいものの、教育がしっかり行き届かなかったがゆえに、いつも来ていただいたお客様にご満足いただけず離れて行ってしまったという例が多いそうです。
一人で経営している場合でも、経営者としての仕事に追われるあまり、エステティシャンとしての技術を磨くことをおろそかにしてしまい、新しい技術に追いついていない、時代遅れの施術をしていたということもあります。美容技術は日進月歩で競争も激しいため、お客様は少しでも良いエステサロンに流れて行ってしまいます。
経営の知識は不足していないか
学校でしっかり勉強して、エステの経験も豊富、お客様にも喜んでもらっている! にもかかわらず、閉店してしまうサロンもあります。原因は、経営に関する知識がなかったということ。
開業・独立を考えてはいたものの、技術を磨くことに精一杯で、事前に経営のことまで学ぶ時間がなく準備不足といった事もよくあります。
集客を見込んで人の集まる都心や路面のテナントを借りたものの、家賃が高すぎてしまい利益回収できなかったり、集客のためにいろいろな広告媒体に掲載するもののお客様の新規獲得率が低かったりといったことが多いのです。
また、近年ではエステサロンが飽和状態にもなりつつあるため、低価格競争に巻き込まれてしまい、近隣に新しくできたエステサロンにお客様を持っていかれてしまった、コンセプトやコースが似ていて差別化できなくなってしまった、など戦略上のミスもあります。
経営者として最適な判断ができるよう、財務管理や経営戦略の立案は、事前にしっかりと行い、定期的に結果を考察、軌道修正していくようにしてサロンを長期的に継続させられるような努力が必要です。
独立や開業に成功すれば、サロン勤めよりもたくさんの収入を得ることができるでしょう。しかし、その分リスクも大。ハイリスク・ハイリターンではありますが、自分の努力次第でハイリターンを期待できるので、しっかりと準備をして成功を掴みましょう。