下着には美しく着飾るファッション用のものから、身につけているだけでスタイルを良くしてくれる補正下着まで、様々な種類がありますね。毎日正しい方法で下着をつけていれば、見栄えが良いだけでなくいつまでも若々しいプロポーションを保てるでしょう。
ですが、そんな下着は一体いつの時代からあるんでしょうか? 今では当たり前のように着用されている下着ですが、それが登場してくる背景には意外なドラマが隠されていたりするもの。そこで今回は女性の下着の歴史を振り返ってみます。
下着の誕生
下着が誕生した時期については諸説ありますが、一説によると古代ギリシャ・ローマの時代までさかのぼれるようです。とはいえ、そこで使用されていたのは現在のようなファッション目的の下着ではなく、バストを押さえたり下から支えたりするためのベルト状のもの。形状こそ似ていますが、現在使われている下着とは考え方が大きく異なっています。まだ人々の生活が豊かではなく、ファッションに気を配る余裕があまりなかった古代には下着は発展しませんでした。
中世~近世の下着事情
中世に入るとヨーロッパで、筒形の形状で胴体を覆う下着“シュミーズ”が登場します。とはいえ、これも体を清潔に保ったり温めたりすることが主な用途で、ファッション目的ではありませんでした。ですが中世に誕生した貴族階級は、様々なオシャレを楽しむなかで下着にもこだわるように。胸から腰までを締めつけるコルセットによって、美しいスタイルを保とうとしたんです。当時の美意識は現在とは異なり、豊かなバストラインよりも細いくびれを追求するものだったので、胴体を強く締めつけて独特のボディラインを作り出すコルセットが流行したんですね。
近代ヨーロッパの下着
ブラジャー
2月12日が「ブラジャーの日」であることを知っていますか? 1914年の2月12日、メアリー・フェルプス・ジェイコブによってブラジャーの原型となる製品の特許が申請されたことから、そう呼ばれているんですね。ブラジャーは元々、コルセットからの解放を求める女性の声に応える形で登場したもの。強く胴体を締めつけるコルセットは生活を送るのにも窮屈で、ケガをしてしまったり体がゆがんでしまったりする危険性を伴っていました。そこでより日常的に、バストラインを整えてくれる下着としてブラジャーが発明されたんです。
ズロース・ショーツ
同じく20世紀初頭にはズロースが登場します。これはショーツよりも丈が長く、ゆるやかに下半身を覆ってくれる下着で、どちらかといえばファッションとしてではなく実用的な用途で身につけられました。また、この時代には社交ダンスが流行し、体を動かしてもストッキングが下がっていかないように留めるガーターベルトも発明され人気を呼ぶことに。人々が経済的な豊かさを手に入れる戦後には、オシャレに重点を置いた“ショーツ”も登場し、普及していきます。
日本の下着
ブラジャー
日本でも洋装が定着していく中で、下着を着用する人が増えていきます。1930年頃には、ブラジャーが販売されるように。といってもブラジャーという名称ではなく、「乳バンド」や「乳房バンド」といった名前で呼ばれていました。また、目的としても当時主流だった和装に合わせるため、バストの膨らみを押さえ込む用途で使われていたようです。現在のブラジャーのように、バストラインを美しく整えるファッション目的の製品が登場するのは1949年の「ブラパット」から。これにはらせん状に巻かれた針金によって、バストラインを豊かに見せる効果がありました。さらに翌年1950年にはパッドを入れられるブラジャーが登場し、女性の日常生活に浸透していきます。
ズロース・ショーツ
日本で下半身に穿く下着が定着するようになったきっかけとして有名なのが、1932年に百貨店・白木屋で起きた火事ですね。当時の女性はほとんどが和装で、下着を身につけていませんでした。そのため、着物のなかがあらわになるのを恥じらって火事から避難できなかった女性が続出したんです。この事件以降、洋装が普及していくとともに、ズロースを穿く人が増えていったと言われています。
さらに戦後、人々が豊かになるにつれて実用的なズロースからショーツへと、人気の下着が移り変わっていきます。1950年代には下着ブームが起こり、他人に見せることを前提としたオシャレな下着が続々と登場。下着デザイナーの鴨居羊子がカラフルで際どいデザインの“スキャンティ”を発表したことも、人気を加速させる原因になりました。そうして現在では様々なデザインと色のショーツが楽しまれているんですね。
古代から現代までの女性下着の歴史を見てきましたが、いかがでしたか? ファッションへの意識の高まりと合わせて、下着も発展してきたんですね。普段何気なくつけている下着ですが、その歴史を知ればもっと愛着が持てるはず。奥深い下着の世界を覗いてみてください。