「なるべく若い女性がいい」「力仕事だから男性が良い」といったように、求人を出す際にはある程度欲しい層が決まっているはず。ですが、求人広告の中で男女の表記や年齢の表記をすることはできるのでしょうか。今回は、求人広告を作成する際に気を付けたい、年齢や性別に関する表記方法をご紹介します!
求人広告で年齢を制限することは、基本的にNG!
年齢表記に関わる「雇用対策法」
募集要項の年齢表記に関わってくる法律として頭にいれておきたいのが「雇用対策法」。少子高齢化のなかで国内の経済を持続的に成長させていくため、年齢ではなく能力に応じた活躍の場を用意するために定められた法律です。平成19年の10月に改正され、年齢制限の禁止が義務化されるようになりました。
雇用対策法 第十条
~前略~労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
同法律内の第十条で以上のように定められています。年齢によって募集・採用に制限をかけることは法的に制限されているのです。もちろん、募集要項には「年齢不問」と記載しながらも、実際の選考では年齢を理由に採用をしないという行為も法律に違反します。具体的には、以下のような表現がNG表現となりますよ。
【NG表現例】
- <エステティシャン募集>40歳以下の方歓迎!
- 他のスタッフとのバランスの兼ね合いで、30代の方を募集
- 20歳以上、40歳までの方限定
- マネジメントスキルが必要となるため、40代以上の方限定
【OK表現例】
- 主に20代のスタッフが活躍中
- 年齢不問!50代以上のスタッフも多数在籍
年齢制限禁止の例外
基本的に年齢制限はNGですが、以下のように一部例外となる場合が存在します。
- 例外1
- 定年の年齢を上限として、それ以下の年齢を募集・採用する場合
- 例外2
- 特定の年齢層の就労が禁止・制限された業務の場合
- 例外3-1
- 長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年層を募集・採用する場合
- 例外3-2
- 技能やノウハウ継承の観点から、特定の職種で特定の年齢層が相当程度少ない場合
- 例外3-3
- 演劇の子役など、役者の募集・採用において表現の真実性が求められる場合
- 例外3-4
- 60歳以上の高年齢者、就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)、国の施策等により特定の年齢層の雇用を促進する場合
上記のような例外募集をする場合にも、表現方法には制限があります。「どうしても募集する年齢に制限をかけたい!」という場合には、厚労省が発表している内容を参考にした上で求人原稿の作成をしましょう。
【年齢制限例外時のOK表現例】
- 65歳未満の方を募集します。(弊社定年が65歳のため)
- 35歳未満の方を募集(若年層のキャリア形成のため)
- 2022年に大学を卒業見込みの方
- 子役募集のため、12歳以下の方に限る
⇒「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」厚生労働省・都道府県労働局
求人広告で性別を特定して記載することも、基本的にNG!
性別表記に関わる「男女雇用機会均等法」
厚生労働省によって定められている「男女雇用機会均等法」。働く人が性別によって差別されることなく、平等に活躍できることを目的として定められました。同法律内では、募集内容や福利厚生、雇用形態の変更や退職といった詳細が記載されています。
特に、求人広告に密接に関係してくるのが以下の項目でしょう。
男女雇用機会均等法 第五条
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
募集の対象から男女どちらかの性別を排除したり、逆にどちらかの性別を優遇したりすることは法的にNGとされているのです。それ以外にも、男性だけに説明会を設けたり女性だけに筆記試験を設けたりするなど、男女によって選考方法を分けることもNGとされていますよ。募集要項の中では性別を限定するような表現は避け、「男性スタッフが多く在籍しています」「ママさんスタッフも活躍中!」といった表現を用いるようにしましょう。
⇒「男女雇用機会均等法のあらまし」厚生労働省
【NG表現例】
- 男性4名、女性5名の募集
- 管理職候補者募集(男性歓迎!)
- 主婦歓迎
- 営業マン募集、カメラマン募集
- 美容師免許をお持ちの男性を募集中
- 女性に関しては未婚であること
- 男性のみ会社説明会あり
- 体力のある男性優遇します
【OK表現例】
- 女性スタッフが多く活躍中!
- 営業スタッフ募集
- 撮影スタッフ募集
- 主婦(主夫)歓迎
性別表記禁止の例外
年齢と同様に、性別表記にも例外となる要件が存在します。
- 例外1
- 男女均等ではない職場の改善のため、女性を募集・採用する場合(ポジティブ・アクション)
- 例外2
- 芸能や芸術の分野において表現の真実性が求められる場合
- 例外3
- 守衛や警備員など、防犯上の理由がある場合
- 例外4
- 労働基準法・保険師助産師看護師法により男性の就業が制限される場合
- 例外5
- 海外勤務の場合で、風俗や風習の違いから男性ではないと働けない場合
例外1であげたポジティブ・アクションとは、「ある職種に従事している女性がほとんどいない」「管理職が全員男性であり、管理職への昇進を控えている女性もいない」といった男女差が発生している企業が、男女均等な職場をつくるために積極的に女性の採用を増やすという取り組みです。男女雇用機会均等法の第8条においても、ポジティブ・アクションを理由とした性別表記であれば法律に反しないとされています。
また、エステティシャンやセラピストといった仕事の場合、風紀上の理由で女性のみの募集に限定することも問題ありません。美容業界の場合は例外に含まれる職種も多いので、「女性限定の募集にしたいけれど記載しても大丈夫かな?」と悩んだ時は一度厚労省やハローワークに問い合わせてみましょう。
ルールを守った求人広告の掲載をしましょう
正社員やアルバイトといった雇用形態に関わらず、求人広告を掲載する際には性別と年齢表記以外にも気を付けるべきポイントがいくつも存在します。年齢や性別、外見や健康状態に関わらず誰でも応募が出来るような内容であることが大前提となっているのです。
【募集・面接時に尋ねるべきではない項目】
- 家族の健康状態、職業、学歴、収入
- 家庭環境や生活環境
- 本籍地や出生地
- 住居の間取りや種類
- 宗教や思想
- 労働組合など社会運動に関すること
- 人生観や生活信条
【求人原稿に記載すべきではない項目】
- 「体力に自信のある方」というような主体的な表現
- 「明るく健康な方」というような身体に関する表現
- 「外国人も歓迎」というような国籍に関する表現
上記のような内容も、募集要項に記載したり面接時に質問したりすることで就職差別としてトラブルに繋がりやすい項目です。本当に業務に必要のない内容以外は質問をしないように気を付けましょう。
公平な採用活動をすることでサロンや企業のイメージもプラスに働くようになりますよ。しっかりとルールを遵守した上で、ターゲットとなる求職者に響くような求人広告を作成してくださいね。
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