派遣社員にも、正社員やアルバイトと同じように「退職」の時期がいつかやってきます。契約期間が満了した時に、「契約の更新」か「退職」かを決断する必要があるのが、直接雇用の社員と派遣社員の大きな違いの一つ。
派遣社員が退職を決断した時にはどんな手順で進めたら良いのか、退職届を提出する必要があるのかなど、今回は派遣の退職に関する内容をお伝えしていきます。
INDEX
■派遣社員が退職するまでの手順
■退職届は必要あるの?
■社会保険・厚生年金保険の切り替えを行う
■契約の途中でも退職できる?
■派遣社員でも退職時の挨拶は丁寧に
派遣社員が退職するまでの手順
では、派遣社員が退職を決めた場合にどのようにしていくのかを見て行きましょう。ひとつの派遣先に長く勤務していた人は、同僚や派遣先のお世話になった上司に退職の意志を伝えたいところですが、派遣社員の雇用主は「派遣元」。まずは、派遣元の担当者にお伝えしましょう。
1.派遣元の担当者に伝える
「派遣期間がもうすぐで終わるけど、次の更新はせずに辞めようかな…」などと考えている人もいるかもしれません。引っ越しなどで遠くに行かなければならないなど、理由はさまざま。もし、そのような事になった場合には早めの対応を心がけましょう。
まずは派遣元の担当者に相談がある旨を連絡します。「次回の更新より1か月程前」には担当者に伝えるようにしてくださいね。派遣先ではシフトが組まれたり次月の業務を組み立てたりといつも通りに進んできます。そこで、急に「辞めます!」と言われてしまえば派遣先の担当者に迷惑がかかってしまいます。このような事を考慮して、「1か月前」には報告するようにしてくださいね。
もし、派遣されている期間が1~2か月と短い場合には、派遣期間の半分を過ぎた時点で派遣元の担当者に意思を伝えるようにしてください。とにかく、ギリギリのタイミングで報告しないように心がけましょう。
2.派遣元より派遣先へ更新しない旨を伝えてもらう
派遣元の担当者に退職の意志を伝え、派遣元の承諾が取れたら派遣元の担当者から派遣先へ派遣社員の退職の旨を伝えられる事になります。ですので、この時点では派遣社員が何かする事はなく、派遣先への手続きもありません。
派遣元と派遣先で退職に向けてやり取りを進めていく事になりますので、派遣社員が好きなタイミングで派遣先に話してしまう事があると混乱を招きかねません。「えっ?派遣元の担当者から、そんな話聞いてないですよ?」などと話が食い違ってしまう可能性も。
派遣社員は派遣元の担当者に退職の意志を伝えたら、派遣元の担当者にお任せしましょう!話が伝わって派遣先から聞かれるようになれば、これまでの感謝の気持ちも込めてお話ししても良いかもしれませんね。
3.業務の引継ぎを漏れなく行う
退職をすることが決定し、それが派遣先の他の社員にも共有された後は、退職による業務の引継ぎを後任の方へ行います。もちろん、後任の方のお仕事の都合もあるので、タイミングは派遣先で確認をするようにしてください。
自分だけが知っているという状況をなくし、伝え漏れがないようにしていきます。予定通りに退職の意志を伝えられれば退職まで1か月程度の期間があるわけなので、引継ぎのためのスケジュールを組むと良いでしょう。
「この日に、この業務を引き継ごう!」としっかり予定を組んでおけば、伝え漏れも無くなります。スケジュールを組み終えたら後任の方へ共有することで、さらに漏れはなくなるはずですよ。不要な書類は破棄し、私物も残していく事なく持ち帰るようにしましょう。
退職届は必要あるの?
直接雇用の社員は、退職を決めた時には企業に「退職届」を提出します。派遣社員も派遣先や派遣元に必要なのでは?と思う人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、派遣社員は派遣先にも派遣元にも退職届は不要です。派遣先に関しては、労働契約を直接雇用されているわけではないので必要がないのもわかります。ですが、なぜ、派遣元にも退職届は不要なのでしょうか。
派遣社員は、派遣元の企業と期間を定めて雇用契約を結んでいます。そのため、本来、退職届は労働契約の解約を願い出るための物なので、雇用期間を決めて雇用されている派遣社員にとって契約を解約するような事がありません。
よって、派遣社員の契約は期間が終了した時点で「派遣先での勤務を継続したいか」や、「派遣元との雇用契約を更新するか」など派遣社員の意志を、派遣元に伝える事になります。そこで、派遣先や派遣元と更新をしなければ「退職」という形になるのですね。
社会保険・厚生年金保険の切り替えを速やかに行う
忘れがちなのが保険の切り替え。派遣社員の時は、派遣元により社会保険に加入されている事もあって、保険加入に関してそこまで意識がないかもしれません。ですが、派遣元の企業を退職する事になり次の仕事も目途を立てていないとなれば、健康保険や厚生年金保険の加入資格がなくなります。
そこで、保険の切り替え手続きを行わないと医療費は全額自己負担となったり、年金の未加入時期ができたりと後々支払い請求が来てしまう事になります。退職後の就業状況によって異なりますが、切り替えが必要な場合もあるので退職が決まったら、お住まいの自治体の窓口で問い合わせたり、国民健康保険に関してインターネットで調べたりしておくと良いでしょう。
【退職後、働く予定がない人・少し時間があく人】
- 健康保険
- 国民健康保険に切り替えが必要
- 厚生年金保険
- 国民年金(第1号被保険者)に切り替えが必要(20歳以上~60歳未満の方)
【ご家族の扶養に入る人】
- 健康保険
- ご家族が加入している健康保険に切り替えが必要
- 厚生年金保険
- 国民年金(第3号被保険者)に切り替えが必要(20歳以上~60歳未満の方)
退職と同時に被保険者の資格は喪失し、このように、退職後に働く予定がない人や家族の扶養に入るという人は、社会保険と厚生年金保険の切り替えが必要になります。派遣社員として働く場合、退職届等の手続きはありませんが、保険の切り替えは自分で行う必要があるのですね。
契約の途中でも退職をすることはできる?
派遣社員と派遣元の間で契約書を交わしているため、基本的には契約期間内で途中退職することはできません。しかし、体調が悪くなって入院をしたり家庭の事情で実家に戻ることになったりした場合など、非常時には派遣元に相談をしてみましょう。「では明日から来なくても大丈夫ですよ!」ということにはなりませんが、派遣先と派遣元で話し合って合意となれば非常時に限り途中退職も可能になります。
契約期間内で退職したいと思う気持ちには様々な理由があるのだと思います。「今とは違う新しい仕事に挑戦したい」という時や、「独立して自分一人で働きたい」などと、ポジティブな退職もあれば、「ちょっと派遣先の仕事が合わないから変えたい…」といったような少しネガティブな退職もありますよね。
どんな理由であれ、よっぽどのことがなければ契約期間が終了するまでは続けるようにしましょう。
派遣社員でも、退職時の挨拶は丁寧に
たとえ短い期間だったとしても、退職をする時にはしっかりと派遣先の先輩たちに挨拶をするようにしましょう。
何年か先に関連会社で働くようになった時など、今の派遣先の人と関わる機会が出てくることもあります。そんな時のためにも、退職時にはしっかりと挨拶をして良い印象を残して退職できると良いですね。具体的に以下のような事をしておけば悪い印象にはならないのではないでしょうか。
【退職前に派遣先で行っておくと良いこと】
・所属していた部署の上長に、「お世話になりました」とご挨拶をする
・直属の上司、先輩にはお菓子やお花を渡すのも◎
・自分が受け持っていた業務の引継ぎをしっかりと行う
・自分が使っていたデスクやロッカーは、最終日までに整理して綺麗に掃除をする
また、取引していたお客様や派遣先の同僚など、直接挨拶に行けない人はメールで挨拶文を送るのも良いでしょう。メールを送る際も、相手の人を気遣う事が大切です。人によっては1日に何通もメールを読んでいる人もいるため、余計な事を長々と書いては読む人に負担を与えてしまいます。また、送る時間にも配慮が必要です。特に避けた方が良いのは「始業時間の前後」で、前日に読めなかったメールチェック等を行っている可能性があるからです。送る時間とメールの内容には気を付ける必要がありそうですね。
【挨拶メールに必要な事】
・部署名、氏名
・お礼の挨拶
・退職日
・後任者の紹介
派遣社員として働く場合には、必ず訪れる「契約期間終了の日」。もう同じ職場で働くことがないとしても、働いていた派遣先から「あの子はとても印象が良かったよ!」と言ってもらえれば、派遣元の担当者からも次の職場を紹介してもらいやすくなります。自分のためにも、礼儀や挨拶を大切にして働けるといいですね。
また、派遣元と交わした契約期間、しっかりと派遣先で働いていく事でまた新たな派遣先でも挑戦を続けられるのかもしれません。契約更新のタイミングで、様々な派遣先に入職し経験を積める事こそが派遣社員の特権なのですね。