美容学校でも習うデッサンですが、やはり得意不得意がありますよね。でも、デッサン力は美容師にとって、とても強い武器のひとつになるので、できれば練習をしておいた方がよいジャンルでもあります。では、デッサンができることは、どのようにサロンワークに役立つのかを解説していきます。
美容師が行う「デッサン」って何?
そもそも美容師の「デッサン」とは何を指すのでしょうか。基本的には美術におけるデッサンと同じく、完成後のイメージをざっくりと表現した素描のことを指します。一般的には“デッサン力が高い”といった言い方を耳にする機会が多いと思いますが、この場合は人や物を正確に再現できる力が問われていると言えるでしょう。ですが美容業界におけるデッサンは、お客様に施すヘアカットやメイクのイメージを固めるために行うもの。美術とは違って、たんなる正確さだけでなく頭のなかにあるイメージを形にする力が大切になってきます。
「本当に美容師にとって必要なの?」と思う人もいるかもしれませんが、美容業界ではデッサンがとても重要視されているようす。というのもデッサンを練習することで、お客様に似合う髪型やメイクをイメージする力を養えるからです。実際に多くの美容学校でデッサンについての授業が行われていて、新人研修のカリキュラムにデッサン講習を取り入れているサロンもあるよう。さらに美容学校の学生を対象とした「ヘアデザイン画」のコンテストが実施されることも。
デッサンを描く際の手順はとくに決まっていませんが、最初に輪郭線を引いて大まかな顔の形を決めるのが一般的。そこから顔のパーツを描いていき、最後に髪を描き込んでいくことになります。いきなり絵を描くのは難しい、という人は写真をトレースして輪郭などの把握に慣れていくという方法もおススメですよ。
瞬時にお客様がイメージするスタイルを把握できる
デッサンがサロンワークで役立つシーンは、主にカウンセリングのときです。カウンセリングというのは、お客様がイメージしているスタイルを出来る限り汲み取ることが大切で、どれほどスタイルを汲み取れたかによってお客様の満足度が変わります。
その際に、多くの美容師がスタイル雑誌からどのようなスタイルが良いかを汲み取る作業をしますが、お客様のイメージしているスタイルはスタイル雑誌には載っていないことが多いです。
特に、ファッションが個性的なお客様の場合は、スタイルも自分なりにイメージしているものがあるので、スタイル雑誌からイメージを汲み取るのはとても難しいのです。
そこで役立つのがデッサンです。例えば、ロブスタイルの場合、どのくらいのロングなのか、ボブ的な丸さはどの程度必要なのか、トップにはどのようなレイヤーを入れるのかなどを詳しく知るのはデッサンが最も効率的なのです。
デッサンした結果レイヤーを多くしたい場合は、お客様は「ロブ」にしたいと言っていても、スタイル的に言うとロブではなく「レイヤースタイル」になることも良くあります。
展開図を描くことできるとスタイルをイメージしやすくなる
デッサンは、展開図を書く場合も役に立つスキルのひとつです。展開図は理論派の美容師に大切な素材のひとつで、新たなスタイルを生み出したり、一つのスタイルを深く理解したりするために必要なものです。
具体的には、展開図をしっかりと描けるようになることで、カットの際のテンションのかけ方やエレベーションの入れ方などを理解できるようになるため、カット技法を理解しやすくなります。
特にスタイリストになりたての人の場合は、展開図をみながらカットを行う人が多いので、デッサンが上手にできるとスタイルをイメージしやすく、カット技術も上達しやすいです。
デッサン力を身に付けて売上げアップにつなげましょう
このように、デッサン力を身に付けるということは、お客様のイメージするスタイルを汲み取りやすくなることや、展開図を描きやすくなりスタイルをイメージしやすくなるなど、直接的に技術レベルのアップにつながりますので、なるべく身に付けておいた方がよいスキルです。
デッサン力を高めるためには、練習が必要です。スタイル雑誌などをみながら、そのスタイルがどのようなスタイルなのかを意識して練習してみてください。
ヘアメイクの仕事でもデッサンは重要
また髪型のセットやメイクアップを施す「ヘアメイクアーティスト」の仕事をする際にも、デッサンを行う必要があります。ヘアメイクはクライアントからのイメージを聞き取り、それを実現するために施術を行っていくのが主な仕事内容。たんに自分のなかでデザインのイメージを固めるだけでなく、それをクライアントに伝えてすり合わせていく必要があるんですね。
そのためヘアメイクアーティストは仕事の一環としてデッサンを行い、デザイン画を描く機会があります。ただしヘアメイク業界ではヘアスタイルだけでなく、メイクのイメージが伝わるようにデッサンを書くのが一般的。カラフルな彩色も施して、ヘアメイク後の印象をしっかりと表現する必要があります。ヘアメイクアーティストとして活躍したいなら、絵が苦手でも練習を積んでおくのがおススメ。ヘアメイク系の養成コースでは大抵デッサンについての授業が組み込まれているので、そこでプロの教えを受けるのも良いでしょう。