華やかな美容業界の世界にあこがれて、美容師の免許を取得。晴れてサロンに就職したものの、いざ働き始めてみると想像した世界と違う…。そんな思いから、転職を考えたり、美容師という仕事自体を諦めてしまう人も多く存在します。
最近はどの業界でも、入社数年での離職率が高くなっていると言われています。その中でも、美容業界での離職率はダントツ。では具体的にどんな理由が離職や転職につながるのでしょうか? 美容業界の現状を踏まえながら、離職の原因や転職の理由をご紹介していきましょう。
美容師の離職率と転職率
近年、日本では入社3年以内で離職する人の多さが問題となっており、特に宿泊業やサービス業、娯楽業など、サービス産業の離職率は特に高いようです。サービス業のひとつである美容師という職業も例外ではなく、勤続年数が平均で5年程度であることから離職率が高いことがわかります。
離職の主な原因
勤務時間/勤務日数
離職の理由で最も多く挙げられるのが、勤務時間の長さ。人気のサロンだと1日中たくさんの予約があるため、朝出勤してから閉店するまで、食事の時間も取れずに仕事をする日もあります。
特にアシスタントの場合は、一人前のスタイリストになるために、開店前に来て練習、日中はスタイリストの手伝いや雑務、閉店後には深夜まで残ってカットの練習をしたりと、かなり過酷な生活している人も珍しくありません。さらに、休日であってもスキルを上げるために講習会に参加することも多いということも離職の大きな原因となっているのですね。
年齢
「29歳」という数字、なんの年齢か分かりますか? 正解は美容師の平均年齢! かなり若いですよね。年齢が上がるにつれて続けていくのが難しいというのが美容師の世界の現状で、例えば男性の美容師の場合、20歳ぐらいから30歳前半が全体の8割強、30歳後半の世代が1割程度、さらに40歳以上となると1割程度まで減少します。
これは、単純に美容業界からしりぞいてしまうというわけではなく、年齢を重ねるにつれてサロン運営にまわる人も増えてきているという現実でもあります。
給与
美容業界に限らず、賃金が低いというのは離職や転職に繋がりやすいものです。現在は基本給も福利厚生も充実してきていますが、それでもまだまだ他の職業と比べて美容師という職業は収入が低いと思われがち。
加えてアシスタント時代は練習時間も多く、時給に換算するとどうしても給料が低く思えてしまいます。美容業界に入ったばかりの新人は「あれだけ働いたのに、給料はこれだけか…」と不満を抱きやすく、早々にやめてしまうパターンも多いのですね。
精神的ストレス
サロンには様々な人がお客様が来店されます。仕事に慣れていないうちの接客は、精神的にかなりの負担がかかり、新人のうちに精神的に参ってしまう人も少なくありません。
また、先輩や同期のスタッフと長時間にわたって同じ空間で過ごすため、精神的に疲労してしまい離職するということもあるようです。
身体面の不安
離職の理由には、健康面にも関係があります。「休憩が取れない」「休日も少ない」という日が続いて、体調を崩してしまうケースが少なからずあります。また、美容師独特の理由として、パーマ剤やカラーリング剤が薬品アレルギーで体に合わない人、シャンプーなどの無理な体勢やハサミを長時間使うことにより「ヘルニア」や「腱鞘炎」になるという人もおり、離職せざるを得ない場合も。
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結婚/産休/育休
結婚や妊娠を機に離職する女性も多いようです。美容師の世界では長時間の勤務も多く、またお客様を担当している場合は働きたい時間を選べないことが多いため、仕事と家事の両立が難しいとのこと。また一日の立ち仕事は体力を使うので妊娠中は辛い、という身体的負担も離職の理由になっています。
転職の理由「スキルアップ」or「人間関係」?
勤続年数が平均で5年程度ということから分かるように、最初に勤めた店舗で働き続けているという美容師は多くありません。ではどうして転職しているのか、というのが気になるところ。理由は大きく分けて「スキルアップ」と「人間関係」の2つに分けることができます。
スキルアップ
新しいカットテクニックを学びたい、最先端のスタイルを得意とするサロンで働きたいなど、自分の技術を向上させるために他店に転職する人は多いようです。中には、他店から腕を認められて引き抜きを受けるというケースも。
また、平均年齢29歳という若い美容師世界では、美容師としてお客様のヘアスタイリングだけを担当し続けている人はまれ。というのも、年齢が上がるとマネージャーや管理などの経営に携わるようになったり、独立を目指す人も多いからです。
人間関係
離職・転職・どちらの原因としても言えるのが、人間関係による精神的負担です。同じサロン内の同僚との人間関係が上手くいかない場合はもちろん、店長やオーナーとの意見の食い違いなどでお店に居づらくなり、他のサロンに転職するということがあります。
美容師を辞めるタイミング
勤めているサロンを退職する決意をしたら、俄然悩ましくなってくるのが「いつ辞めるか」というタイミング。店長に退職の話をいつ切り出そうかと悩んでいるうちにタイミングを逃し、尚更言い出しづらくなるなんて事態は避けたいもの。良い辞め方をすることによって、気持ちを切り替えて転職後の職場ですっきりとした状態でスタートを切ることにも繋がります。
美容師に限らず、仕事を退職することはキャリアや生活に大きな影響を与えるもの。人それぞれ退職のベストタイミングは異なるかもしれませんが、基本的には勤めているサロンに極力迷惑をかけないように辞める必要があるでしょう。
まず考えるべきは、あなたが美容師のアシスタントなのか、スタイリストなのかということ。それによって辞めるタイミングも異なってきます。例えばアシスタントの場合には、そのお店に勤めはじめたばかりなら早めに辞めてしまうという選択肢も。退職しようか悩みながらアシスタントとしてしばらく働いた後に退職すると、転職後のサロンで再びアシスタントとして一からスタートすることになってしまいます。
中途半端な状態が一番良くないので、退職を考えているなら早めに退職するか、そのサロンでスタイリストになるまで頑張ってみるのもおススメ。コツコツと実績を作っておけば、転職先で即戦力のスタイリストとして活躍できるはず。
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そして次にスタイリストの場合ですが、こちらもタイミングを見ることが大切です。スタイリストに昇進してすぐに退職すると、転職先のサロンでアシスタントやJrスタイリストからキャリアを積み直すことになるケースも。転職先のサロンでもスタイリストとしてスタートを切りたいなら、ある程度の実績が必要です。
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美容師を辞める時の挨拶や方法
一般的な企業を退職する場合には、1カ月前の告知が義務付けられていることが多いでしょう。ですが美容室を辞める場合には少し事情が変わってきます。なぜかというと多くの美容室では余裕をもってスタッフの雇用をしているわけではなく、ギリギリの人数で営業しているため。スケジュール的に余裕をもって、3~6カ月前に退職を伝えるというルールになっているお店が多いようですね。
退職までの期間に余裕があれば、お世話になったお客様に直接お礼を伝えることもできるはず。ただし、お客様に「今後は転職先のサロンへ来てください」と伝えるのは避けましょう。お客様がサロンに悪い印象を抱いてしまうかもしれませんし、今までお世話になったサロンに対してもマナー違反。サロンと揉めてしまうこともあるので、円満に退職したいなら避けた方が無難でしょう。
美容師業界は体力的にも精神的にも厳しい業界なため、離職率が高いことがわかりましたね。ただ一方でキャリアアップや、さらに腕を磨くために他の店舗に転職するという人も。ここで紹介した離職や転職の理由を参考にして、自分の体力や精神面、経済面と相談しながら、将来を決めていって下さいね。
美容師免許を活かせる再就職先
美容師の再就職先として人気の高い職業がアイリスト。美容師免許が必須なので、元美容師を高待遇で採用しているサロンも少なくありません。美容師時代に悩まされたシャンプーやカラー剤などによる手荒れの心配が無く、座りながらの施術なので体力面でも比較的負担が少なく働くことができます。アイリスト経験がなくても、未経験者を歓迎しているサロンが多く、その分研修も充実の内容。数カ月かけてアイメイクの基礎知識や施術方法をしっかりと勉強し、接客技法やカウンセリングまで学ぶことができます。
また、カット、シャンプー、カラーなどを分業して行っていた美容師時代よりも、施術の最初から最後までを担当できるアイリストの方がやりがいに繋がるという人も。研修制度の充実やお客様との密接な関わりが、多くの元美容師にとって魅力になっているようです。
美容師時代のスキルを活かせる職業として、ヘアメイクも人気があります。主な勤務先はヘアメイク専門店やフォトスタジオ、結婚式場、ヘアメイク事務所など。例えばヘアメイク事務所に就職すると、映画やCM、雑誌や広告などの仕事がメインになります。ヘアメイクという職業の華やかさに憧れて、美容師から転身するケースも多くいます。
採用されるには美容室勤務時代の実績が必要で、ヘアスタイルなどの作品を持ち込む方法が一般的です。ただし収入面や労働条件は美容室勤務よりも悪くなる場合も多く、ヘアメイク事務所に就職を希望する場合は相当の覚悟と辛抱強さが必要でしょう。
美容業界内での再就職を考えると、美容部員への転職という道もあります。主に百貨店やドラッグストアの化粧品売り場で、ファンデーションやアイシャドウ、シャンプーからマニキュアまで様々な化粧品を販売するのが美容部員の仕事。最新の化粧品に触れながら、数多くのメイクテクニックを習得して常にトレンドの最先端に立つことができるため、美容やメイクに関心が高い人にとっては最高の環境と言えるかもしれません。
お客様の髪型に合わせたメイクを提案するなど、元美容師ならではの視点からアドバイスできるのも嬉しいポイント。美容師時代に培ったセンスや経験を生かして、次の業界でも活躍してくださいね。