美容師になるために避けては通れない「美容師国家試験」。その関門のひとつ“筆記試験”は、まさに記憶力との勝負です。2年間、美容学校でみっちり覚えてきたことを何回も復習して覚えなければいけないので、勉強が苦手な人はちょっと憂鬱かもしれません。
でも、ご安心を。筆記試験は過去の試験問題が公開されており、事前に出題傾向をつかむことができます。傾向と形式を抑えながら勉強すれば、効率も上がって一石二鳥! さっそく、どんな内容が出題されるのか見ていきましょう。
筆記試験は全てマーク式
記述問題は一つも無く、出題される50問全てがマークシート式になっています。しかも、4つの選択肢の中から正解を1つ選ぶ4択問題なので、かなり答えも絞られてきます。問題の形式も、たまに穴埋めや「下の図の~に該当するものは、次のうちどれか」という語句問題が出題されますが、ほとんどが正誤問題になっています。
正誤問題では、誤っているものなのに正しいものを選んでしまったりというイージーミスが多発します。誤っているものを答えさせる場合には問題文にも強調して書いてあるので、見落とさないようにしっかり読みましょう。また、試験時間は1時間40分なので一問あたりにかけられる時間は2分ほど。もし問題につまずいてしまった時は、その問題を後回しにして解けるものから解いていきましょう。
筆記試験で出る科目は全部で5つ
国家試験で出題されるのは「関係法規、制度」「衛生管理」「美容保健(人体の構造及び機能、皮膚科学)」「美容の物理、化学」「美容理論」の5項目です。と言われても、イメージしづらい人もいると思うので、実際に過去問も見ながらそれぞれの項目ごとに紹介していきましょう。
関係法規、制度
例)美容師法の処分や罰則に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)美容師試験の合格者が美容師名簿に登録される前に美容の業を行った場合、罰金に処せられることがある。
(2)住所を変更した美容師が美容師名簿の訂正を申請しなかった場合、業務停止処分を受けることがある。
(3)美容所の開設者が届出事項の変更手続きをしなかった場合、美容所の閉鎖命令を受けることがある。
(4)美容所の開設者が構造設備について都道府県知事の確認を受ける前に美容所を使用しても、開設の届出を行っていれば、処分や罰則を受けることはない。
正解は、(1)です。
例)美容士法において、保健所を設置する地方公共団体が条例で規定できることになっている事項に該当しないものは次のうちどれか。(第32回美容師筆記試験より)
(1)美容師が美容所以上の場所において業を行うことができる場合
(2)美容師が業を行うときに講ずべき衛生上必要な措置
(3)美容所の開設者が管理美容師を置かなければいけない条件
(4)美容所の解説者が美容所につき講ずべき衛生上必要な措置
正解は、(3)です。このように、「関係法規、制度」では、主に美容師として守らなくてはいけない法律や基準について学びます。美容師法や、衛生・保健に関する事を学んでいき、国家資格者である事の社会的な責任等を身につけていきます。
衛生管理
【公衆衛生・環境衛生】
例)次の無機質のうち 、赤血球ないのヘモグロビンに含まれていて、酸素の運搬に重要な役割を果たすものはどれか。(第31回美容師筆記試験より)
(1)カルシウム
(2)リン
(3)鉄
(4)ナトリウム
正解は、(3)の鉄です。これは、中学校の生物みたいですね。
【感染症】
例)次の感染症のうち、飛沫核感染(エアゾール感染)をしないものはどれか。(第33回美容師筆記試験より)
(1)A型肝炎
(2)結核
(3)水痘(水ほうそう)
(4)麻しん
正解は、(1)です。
【衛生管理技術(消毒法)】
例)紫外線消毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)紫外線消毒は、タオルやケープなど、布片類の消毒に適している。
(2)紫外線消毒は、1c㎡あたり85マイクロワット以上の紫外線を10分間照射する。
(3)紫外線ランプは、しようと共に出力が低下するので、2,000~3,000時間で取り換える必要がある。
(4)紫外線消毒は、あらゆる微生物に効果があり、血液の付着した器具の消毒にも適している。
正解は、(3)です。このように、「衛生管理」では、公衆衛生・環境衛生、感染症、衛生管理技術などについて学んでいきます。試験では「公衆衛生・環境衛生」「感染症」「衛生管理技術(消毒法)」の3つに細分化されて出題されるので、他もおさえながらこの3つを重点的に勉強するといいかもしれません。
美容保健
【人体の構造及び機能】
例)交感神経が優位になった時におこる現象は、次のうちどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)瞳孔の縮小
(2)心拍数の減少
(3)気管支の拡張
(4)消化管運動の亢進
正解は、(3)です。
【皮膚科学】
例)皮膚疾患に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(第33回美容師筆記試験より)
(1)円形脱毛症は、他人に感染することはない。
(2)尋常性毛瘡(カミソリカブレ)では、ひげの毛包に化膿菌が感染して、慢性の炎症をおこす。
(3)脂漏性皮膚炎は、フケ症やあぶら性の人に多くみられ、黄色調の紅斑に落屑を伴う。
(4)染毛剤によるアレルギー性のカブレでは、同じ染毛剤でも低濃度であれば、再びかぶれることはない。
正解は、(4)です。「美容保健」では、人体、主に皮脂や毛髪、血流など人の身体のしくみについて学んでいきます。試験では「人体の構造及び機能」と「皮膚科学」の2つに分かれて出題されます。マッサージなどの血流をよくするのも、身体のしくみを知っているのといないのではまた違ってきますよね。
美容の物理、化学
例)ヘアスタイリング剤に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)ヘアリキッドは、メタノール水溶液にスタイリング成分を溶解したスタイリング剤である。
(2)エアゾールタイプのヘアスタイリング剤に噴射剤として配合されるのは、フロンガスである。
(3)ヘアスタイリング剤に配合されるアクリル樹脂アルカノールアミン液は、防腐・殺菌剤である。
(4)ヘアスタイリング剤のセット力の違いは、被膜形成剤の配合量による。
正解は、(4)です。
例)ヘアカラーに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)脱色剤は、毛髪に含まれるメラニンを酸化して分解する。
(2)酸化染毛剤により染毛しても、1回のシャンプーで色落ちする。
(3)染料中間体をカップラーとともに用いると、様々な色調に染毛できる。
(4)一時染毛料は、法定色素等を毛髪の表面に付着させて着色する。
正解は、(2)でした。物理や化学なんて、高校の科目と一緒じゃ? と思うかもしれませんが、美容の場合には主に使用する薬剤や道具、機械、装置について学んでいくことになります。普通の物理や化学だと、ちょっと難しくて抵抗感がありますが、美容だと自分の馴染みのあるものが題材になっているので、少し覚えやすいですね。
美容理論
例)シザーズに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)セニングシザーズは、毛量をほどよく整えるために用いる。
(2)母指で操作する方の刃を動刃という。
(3)動刃と静刃の間に、凹レンズ状のあきが正確につくられているものがよい。
(4)シザーズを開閉したときに、交点での接触圧が均等であるものがよい。
正解は、(3)です。
例)ファンデーションの塗り方に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(第38回美容師筆記試験より)
(1)頬は、皮膚の動きが多いので薄めに塗る。
(2)鼻のまわりは、皮脂の分泌が多いので厚めに塗る。
(3)頬は薄く、その他は厚く塗ると、崩れにくい仕上がりになる。
(4)ファンデーションを薄くのばすためには、スポンジを滑らせるように動かすとよい。
正解は、(4)です。
例)ファンデーションの種類と特徴に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(第32回美容師筆記試験より)
(1)ケーキタイプは、クリーム状で汗などに強く、カバー力と耐久力がある。
(2)リキッドタイプは、乳液状で油分が少なく、カバー力が弱い。
(3)プレストパウダータイプは、水性タイプの固形で、油分が多く、カバー力が強い。
(4)スティックタイプは、油分が少なく、カバー力と耐久力が弱い
正解は、(2)です。美容理論は主に、美容に関する技術、器具の扱い方、操作方法などを学ぶことになります。ハサミの種類や、カットの違いなど、美容師として働くための基礎知識となるので、しっかり覚えていきましょう。
いかがだったでしょうか? これはまだまだほんの一部に過ぎないので、もっと多くの問題を見ながら対策を練ってみてください。また、間違った問題はとことん理解できるまで調べるのもポイント。最近はスマホで筆記試験対策をできるようにもなったので、空いた時間に挑戦してみてください。