現代社会では、日常生活で溜まった疲れやストレスを解消するためにアロマセラピーやアニマルセラピー、タラソセラピーといった様々なリラクゼーションが用いられています。そんな中でも近年注目されているのが「森林セラピー」。
森に足を踏み入れ植物の緑や土の香りなどを感じると、人はリラックスし、心身がリフレッシュします。これを「森林浴効果」と言うのですが、最近ではその効果を科学的に利用して健康に役立てようとする森林セラピーの取り組みが全国で行われています。ここでは森林セラピーの具体的な内容や魅力について見ていきましょう。
森林セラピーって何?
人が森から得られる癒しの力、森林浴効果。国の緑化を推進する機構「国土緑化推進機構」は、森林の癒し効果を科学的に解明し、その活用方法などを研究してきました。そして森林にいるときには、都市にいるときと比較してストレスホルモンが減少することなどが分かってきたんです。
そこで始まったのが森の中で様々なプログラムを行い、森林浴効果を利用して心と体の健康を取り戻そうとする森林セラピーの取り組みです。全国には「森林セラピー基地」「セラピーロード」という場所があり、ガイドが提供するプログラムを行うことができます。それでは森林セラピーでは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?
フィットネスプログラム
まず一つ目に、森の地形を利用して歩いたり、ストレッチやヨガ、森林内レクリエーションをしたりとアクティブな運動を行うものがあります。森林の中で汗をかくことで、いつもの運動よりも気持ちのいい爽快感を得ることができるのが魅力ですね。
リラクゼーションプログラム
森林の中で呼吸法を学んだり、アロマセラピーを受けたりすることでリラクゼーション効果を得て、ストレスケアを行う取り組みです。森林の持つ生命力を感じながら、蓄積された疲労やストレスを解消できますよ。
その他のプログラム
それ以外にも、地域の食材を使った健康食を食べながら栄養について学んで、心身ともに健康になるプログラムもあります。また、中にはホタルの鑑賞や夜に満天の星空を眺める「星空浴」といったものを行っているところも。面白い試みがたくさんあるので、ぜひ調べてみてください。
森林セラピーで得られる効果って?
森林セラピーについては医療機関や森林の研究機関などによって実験が行われ、様々な健康効果があることが解明されています。都市部と森林部でそこにいる人の唾液を調べた際には、「コルチゾール」というストレスホルモンの濃度が森林部では減少することが分かりました。また、森林ではストレスがかかったときに活発になる「交感神経」の活動が抑えられ、リラックス時に活発になる「副交感神経」の活動が高まると言います。さらに脳の前頭葉を沈静化してリラックス効果を得られること、免疫機能が高まることなども判明しています。
心への効果
リラックスした状態になれることに加えて、「緊張」や「抑うつ」、「疲労」、「混乱」のような心理的なストレス状態が改善され、逆に気分が良くなり「活力」や「意欲」といったエネルギーを得られることが分かっています。
体への効果
驚いたことに、森林セラピーによって体にも変化が。体の痛みの改善や血圧の低下、脈拍の減少といった自律神経に関する不調の改善が期待できます。さらに「抗がんタンパク質」が増加することも分かっていて、体の健康にとって森林が優れた効果を発揮することが周知のものとなっているのです。
森林セラピーに向いている場所は?
森林セラピーは、森林であればどんなところでも良いというわけではありません。自然が豊かであること、セラピーを行う環境が整っていること、有害物質がないことなど、安全で効果的に森林浴効果が得られることが大切です。そして、全国には森林セラピーに向いた森林として「森林セラピーソサエティ」によって認定された場所が60カ所あります。
そうした場所は「森林セラピー基地」「セラピーロード」と呼ばれ、「五感に働きかける良好な自然環境」「施設などの整備状況」「アクセスなどの立地条件」といった環境面での条件や、滞在施設についての「セラピーメニュー」「管理実態」「持続性・発展性」といった厳しい条件が課せられています。全国に60カ所もあるので、森林セラピーに適した場所を見つけたいのであれば、まず近くに「森林セラピー基地」「セラピーロード」に認定された場所がないか探してみるのをオススメします。
森林セラピスト・森林セラピーガイドとは
「森林セラピーガイド」は森林浴効果が上がるような散策の方法やアクティビティなどを森林の中でガイドする人のことです。また「森林セラピスト」は、その人にあわせたプログラムを提供し、セラピー活動が効果的になるよう指導・提供する人のことで、森林セラピーガイドの知識とともに、心身の健康に関する専門知識とコミュニケーション能力の高さが求められます。
また、森林セラピーガイドや森林セラピストの資格を取得するには、森林セラピーソサエティが毎年実施している「森林セラピー検定」を受ける必要があります。検定は1級と2級に分かれているので、森林セラピーガイドになりたいという人は2級を、森林セラピストになりたい人は1級の資格を取得するのが良いでしょう。
受験資格としては、まず森林セラピーソサエティの「森林セラピー検定」1級または2級の通信教育課程を終了したのち、レポート提出や試験を合格しておくことが必要になります。通信教育で勉強ができるため、普段仕事をしている人でも自分の都合に合わせて学ぶことができますね。
日々の生活に疲れ、自然に癒しを求める人も多い現代において、リラクゼーション効果と心身の健康を得られる森林セラピーは需要が高まっています。それに伴って、安全で効果的な森林セラピーを行うための指導をする森林セラピストや森林セラピーガイドも人気上昇中。仕事にしたいくらい森林が好き! という人は目指してみてはいかがでしょう。